――ある休日。
赤ちゃんが泣くと、母親がやってきてその子を抱き上げた。
その子はミルクを与えられ、ご機嫌になった。
暫くすると、また、赤ちゃんが泣きはじめた。
今度は父親が少し面倒くさそうにやってきて、おむつを替えた。
赤ちゃんは、とても満足そうにみえた。
夕方になって、また赤ちゃんが泣きはじめた。
抱き上げた母親は不穏な表情をすると、赤ちゃんの額にそっと手を当てた。
すごい熱だ。
父親が救急病院を調べて、夫婦は赤ちゃんを毛布にくるんで家を出て行った。
私はその光景を一人離れて見ていた。
赤ちゃんは決して一人では生きられない。
誰かがミルクを与えたり身の回りの世話をしなければ、いずれ死んでしまう。
そこには愛しかなかった。
赤ちゃんを見ていると、自分は誰かに愛されていたと思わざるを得ない。