ココロの旅

お母さんと旅に出る ~其の5~

これまでのお話。

お母さんと旅に出る ~其の1~

お母さんと旅にでる ~其の2~

お母さんと旅にでる ~其の3~

お母さんと旅にでる ~其の4~

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――母が転んでけがをした。

私は電話越しに、意外にあっさりその事実を受け入れた。

電話での状況報告では、
通院したところ異常はなく、大きなケガではないとのこと。
念のため、もう一度通院するが、旅行には行けそうとのことだった。

私は、ふと思った。

――お母さんの抵抗かな。

こんな時に『抵抗』とかいう言葉が出てくる自分が笑えた。
なんともカウンセラーらしい。

感情が抑圧され、冷静になっている私がいる証拠だ。

が、その一方で、自分を責めようとする自分に気がついた。

突然旅行に誘ったからこんなことになったのだ――、と。

以前の私ならこの考えに呑まれたかもしれないが、
今の私は違う。

じゃあ、なんだ?

――これは、私へのテストなのか。

テスト?
一体何のテスト?

――意味不明だ。

色んな考察が浮かんだが、
どれも違う気がして、私は考えるのを辞めた。

カウンセラーをやっていると他人のことはよくわかるが、不思議と自分のことはわからなかったりする。あるあるだ。

もっと分析しようと思ったが、ここでは「ただ転んだだけ」と考えることにした。
それだけは事実であり、変わらない。

違和感を持ちながらした意味づけに、意味を持たせることは難しい。

とにもかくにも、旅行は決行される。


つづく

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