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メディック!第1章 表紙

小説『メディック!』

2021/6/9

#09 小説『メディック!』【第1章】1-8 俺×由良 夢のカケラ

第1章 俺×由良 夢のカケラ 1-8 前回のお話を読む(#08 第1章 1-7へ)第1章をまとめて読むはじめから読む(プロローグへ) *  勇登はドアの前で腕時計を確認した。 喫茶PJ、閉店10分前。 「ギリギリセーフ!」  店のドアを勢いよく開けると、努めて明るくそういった。勇登と目が合うと、ナオは挙げていた手を焦って下ろした。 「何がギリギリセーフよ。もう閉店です」 客のいない店内にナオの声が響いた。 「いいじゃん。少しだけ」 そういってカウンターに座る勇登に、ナオは口を尖らせながら水を出した。 「今 ...

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メディック!第1章 表紙

小説『メディック!』

2021/6/2

#08 小説『メディック!』【第1章】1-7 俺×由良 夢のカケラ

第1章 俺×由良 夢のカケラ 1-7 前回のお話を読む(#07 第1章 1-6へ)第1章をまとめて読むはじめから読む(プロローグへ) *  ナオは専門学校の入学式を終え、学校生活と店の仕事と忙しくしていた。  店のテーブルを拭きながら、ふとあることに気づいた。  ――おかしい。あれから勇登が店に来ない。  いつも来る人が来ないと、気になる。こちらも忙しかったし、別につきあってるわけでもないから、連絡はしなかった。勉強の邪魔になってもいけない。それでも、なんだかんだといって、週末には顔を出すことが多かった。 ...

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メディック!第1章 表紙

小説『メディック!』

2021/6/2

#07 小説『メディック!』【第1章】1-6 俺×由良 夢のカケラ

第1章 俺×由良 夢のカケラ 1-6 前回のお話を読む(#06 第1章 1-5へ)第1章をまとめて読むはじめから読む(プロローグへ) *  ――困った。  勇登はここ数日で本当に気づいてしまっていた。 今でも本気でメディックになりたいということに。そのことを考えると、なれたときの妄想が止まらなくなるし、気がつけばいつもそのことばかり考えている。それは誰かに恋をしたときのような感覚に似ていた。  はじめて『メディックになりたい』と思ったときの感覚が、みるみる蘇ってきている。  そして、同時に迷ってもいた。 ...

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小説『メディック!』

#02 小説『メディック!』【第1章】1-1 俺×由良 夢のカケラ

2021年4月14日

第1章 俺×由良 夢のカケラ

前回のお話を読む(プロローグへ)


 志島勇登(しじまゆうと)は額の汗を手の甲で拭いながら、喫茶PJ(ピージェイ)のガラス扉を思い切り押した。

 ドアに取り付けられている真鍮色のベルが、カランカランと派手に鳴った。店内に入るとすぐに、ほろ苦いコーヒーの香りに包まれた。カウンター席が5席、テーブルが2卓ある小さな喫茶店。  

「また走ってきたの?」

 Tシャツにハーフパンツ姿の勇登を見た城嶋ナオ(じょうしまなお)は、カウンター越しに呆れ顔でいった。そんなナオに勇登は構わず、軽い足取りでいつもの席についた。カウンターの一番奥の壁際が指定席だ。

 ナオは勇登の高校の同級生で、航空自衛隊小牧基地近くにある家族経営の喫茶店の娘だ。ついこの間、勇登と同じ高校を卒業して、4月からは調理の専門学校に通うことになっている。

 明るく人好きな性格で、実家の喫茶店を手伝っている。茶色のシュシュで緩く纏められた黒髪が、どこか昭和を感じさせる店の雰囲気に合っている。

 ナオは勇登が腰掛けると同時に、キンキンに冷えた氷水を出した。

「ありがと」

 勇登はナオの目を見て笑った。

 一方の勇登は、中学校進学時に、母の小牧基地への転属が決まり、祖父母が遺した小牧市内の母の実家に住みはじめた。

 高校進学時には、母は岐阜基地に転属となったが、小牧基地と岐阜基地の距離は20キロ程度離れているだけだったから、母はそのまま実家から通勤した。おかげで勇登は、引っ越しから解放され、中学・高校時代を小牧で過ごすことができた。

 勇登は水を一気に飲みほすと、アイスコーヒーを頼んだ。

「ところで勇登、ちゃんと勉強してるの?」

 ナオはグラスに氷を入れながらいった。

「まあ、ぼちぼちな」

 勇登は頭上で何となく流れているテレビを見ながら、上の空で答えた。

「受験でいろいろあって大変だったのはわかるけど、気分切り替えなきゃね」

「……そうだな」

 勇登は、テレビから目を離すことなくしかめっ面で答えた。高校卒業後は大学に進学する予定だった。

 しかし、インフルエンザや盲腸の緊急入院が、ことごとく試験日と重なり大学受験に失敗した。挑戦することも許されなかったなんて、運が悪かったとしかいえなかった。そして、母は勇登の高校卒業と同時に再び転属してしまい、勇登はひとり小牧で浪人生活を送ることとなった。

「前から思ってたんだけど、勇登、大学入ってなにするの?」

「……何するって、みんなそうしてるし」

「自分の目標とかってないの?」

 ナオはアイスコーヒーを勇登の前に出した。

「……さあ」

「なんか、他人事みたいね」

 勇登はこの話題が嫌になって、話を変えた。

「そういえば、小学校の同級生からクラス会に誘われたんだ。4月からは進学や就職で地元離れる奴も多いから、最後に会っておこうって趣旨らしいけど、浜松遠いし、めんどくせーな」

 勇登は小学4~6年を浜松で過ごした。3年間だけだったが、転校生ということで、よくしてもらえたのだ。クラス全員とにかく仲がよかったのを覚えてるし、転校後も付き合いのある友達が何人かいた。

「ふーん」

 ナオは腕を組むと、立派な筋肉をした勇登の上半身をいちべつしていった。

「そうやって文句いいながらも行くんでしょ。勇登結構モテるしね。……ちょっと気になるあの子、とかいたりして」

「――!」

 飲んでいたコーヒーが気管に入り、勇登は大きくむせた。

つづく

※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、名称とは一切関係ありません。


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