第8章 (俺×オレ)+(ジョン×五郎) 限界の先にいた仲間 8-3
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その日の夕飯は鶏一羽を支給された。
ジョンはさばいた鳥を無表情で網の上に乗せた。
――食べる気分じゃない。
腹はとてつもなく減っていたが、腹が立ってそれどころではなかった。
吉海は鳥肉の焼ける香ばしい匂いを、鼻から思い切り吸うと「うまそう」と笑顔を見せた。焼きあがると少しばかりの素焼きの肉片を、ニコニコして食べる吉海にジョンがいった。
「なに、平気な顔でくってんだよ」
「?」
吉海は発言の意図がつかめず、笑顔のままジョンを見た。
ジョンが突然、吉海の胸ぐらを掴んだ。
「おい、ジョン!やめろよ!」
そういって勇登がジョンの肩に触れると、ジョンは吉海を離して今度は勇登に掴みかかった。
二人はお互いを掴んだまま地面に倒れ込んだ。しかし、力が拮抗してどちらも動けず、そのまま睨み合いとなった。
すぐに剣山が動いた。勇登に馬乗りになるジョンの後ろから脇に手をとおすと思い切り引いた。それと同時に、宗次は二人の間に割って入り、勇登側についた。
吉海は裂かれた肉片を口から垂らしたまま、呆然としていた。
「お前ら!なにやってる!?」
異変に気がついた正則が、地を這うような声を出しながら近づいてきた。
剣山がすぐに答えた。
「な、なんでもありません。ちょっと肉の取り分で、もめただけです。私が食べ過ぎてしまって……、なっ?」
剣山が全員に同意を求めると、全員揃って、うんうんと頷いた。
「……」
正則は全員を一瞥すると、何もいわずに去っていった。
その後は、とても静かな食事の時間になった。それでも、肉片が全く残ってない骨だけが後に残った。
ジョンは誰ともしゃべらずに、就寝用のテントに入った。
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、名称とは一切関係ありません。