小説『メディック!』

#47『メディック!』【第10章】 10-1(剣山×子猫)+俺  思い出

2022年3月23日

第10章 (剣山×子猫)+俺  思い出 10-1

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第10章 (剣山×子猫)+俺  思い出
 
 ――ミー、ミー。

 どこからか子猫の鳴く声がする。
 いやいや、そんなはずはない、ここは内務班だ。
 ああ、これは夢か。勇登は納得した。
 そういえば、昔ニャーが子猫の頃もこんなかわいい声で鳴いてたな。
 小4のとき、段ボールに入れられて川を流れていた彼女を、父さんと協力して救ったんだ。二人して意気揚々と官舎に帰ると、子猫をまるで勲章でも得たかのように母さんに見せた。すると母さんは――。

「うわあああぁっ!」
 ジョンの叫び声で勇登は眠りから覚め、部屋の全員が飛び起きた。月曜の起床前から迷惑な話だった。

「おい、ジョン、朝っぱらからうるせえぞ!」
 勇登がジョンを睨むと、窓際の自分のベッドの横に立っていたジョンは、手に持っていた黄土色の毛布をすぐさま広げてベッドにかけた。

「……なに、隠したんだ?」
 勇登は起き上がると、ジョンににじり寄った。

「な、なんも隠してねぇ!」
 ベッドの前に立ちはだかるジョンを勇登がどかそうとすると、彼は本気で応戦してきた。

「吉海!」
 勇登はジョンに抱きつくとそう叫んだ。
 吉海は待ってましたとばかりに、ジョンのベッドの毛布をはがした。

 ――!!

 ベッドのシーツには、明らかに寝小便と思われる世界地図が描かれていた。
 剣山、宗次、勇登、吉海は一気にジョンを見た。

「ち、ちがう!俺じゃない!」
 ジョンは焦っていい張ったが、証拠が目の前にあってはどうも説得力に欠ける。

「まあ、そういうこともありますよ」
 吉海がにやけ顔で、大人の発言をした。

「だから、ちがうっていってんだろ!」
 ジョンは吉海の首を絞めにかかった。すると、

 ――ミー、ミー。

 何かが室内で鳴いた。
 全員で周りを見渡すと、どこからともなく真っ白な子猫が現れた。

 ――!?

「あら、かわいい猫ちゃん」
 宗次がそういって子猫を取り上げた。
 宗次の手の中の子猫を皆、興味津々で見た。

「なんで、こんなことろに子猫がいるんでしょう?」
 吉海が怪訝な表情でいった。

「あ、なんか足のところ、包帯まいてるぞ。同化してわからんかったけど」
 勇登は子猫を覗き込んでいった。

「わかった!俺のベッドにおもらししたのは、きっとこいつだ!な、な?」
 ジョンがそういって皆に同意を求めると、宗次が「そうかもしれないね」と笑った。
 ジョンは「こいつめー」といいながら、子猫の首根っこを掴もうとした。

「すまん!」
 それまで黙っていた剣山が、急に頭を下げた。皆の視線は一気に子猫から剣山に向いた。

「そいつは昨日、俺がここに連れ込んだんだ」
 そういうと剣山は昨日の出来事を話してくれた。


 つづく


※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、名称とは一切関係ありません。

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