第7章 俺×母 降臨 7-3
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週末の夜、勇登はかけ足で実家に帰った。
学生は平日外出できないから、ビールを冷やすことができなかった。コンビニの袋片手に焦って家のドアを開ける。
酒がなくて暴れているかもしれない。
勇登が恐る恐るリビングに入ると、由良はおかえりもいわずに「ナオちゃんとはどうなってるの?」とビール片手にぶしつけにきいてきた。
どこから出してきたのか、高校時代の勇登の青いジャージを丈を詰めることなく着こなしている。勇登に期待していなかったらしく、由良は自分でビールを用意していた。
「別にどうもなってないよ。つーか、なんで俺がナオと会ってること知ってる?」
「ナオちゃん高校生の頃かわいかったよね。もう23だって?行ってみようかな、喫茶PJ」
「質問に答えろよ」
勇登は頭を抱えた。
高校生の頃、由良が当直のとき喫茶PJで夕飯を食べていることを漏らしたら、すぐに「挨拶に行かなきゃ」といいだして、次の日には菓子折りが用意されていたことがあった。
ちゃんとお金も払ってるし大丈夫といったが「そういう問題じゃない」といってきかず、仕方なく連れて行ったことがあった。
連れて行ったら行ったで、店の中で「ナオちゃんかわいいねぇ」とエロいおやじのような口調でささやいてきたり、帰ってからもこれまた企みのある変質者のような目つきで擦り寄ってきては、「やっぱり女の子はいいねぇ」と耳打ちしてきたのだ。
その後も、夕飯作るの面倒になったとか、あれこれ理由をつけては何度も「行きたい」といってきて、止めるのが大変だった。
由良はニヤニヤしながらいった。
「ふふふ、み・か・ちゃん。知り合いなのよ。勇登は鈍いわね」
勇登はどうして美夏が勇登の実家を知っているのか、ずっと気になっていた。クラス会に呼んでくれた同級生にでもきいたのだと思っていた。
WAFは思いもよらぬところで繋がっていたりする。
全くもって油断ならない。
「絶対に行くなよ。話がおかしくなるに決まってる」
勇登は由良に背を向けながらそういうと、冷蔵庫にビールを入れた。
「なによ、あたしはただ働く女性を応援したいだけなの。頑張れ~、っていいたいだけなの」
かわい子ぶった由良の声を、勇登は背中越しにため息をつきながらきいた。
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、名称とは一切関係ありません。