第5章 (宗次×亜希央)+俺 もう一人の同期 5-7
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訓練終了後、勇登は宗次に呼び出され、橋の上に来た。
「浅井さんって、扉全閉してても、勢いだけでぶち破ってくるような人だな」
宗次が呆れ顔で、でも少し嬉しそうにいった。
「俺、そういう人、他にも知ってる」
勇登には母の顔が思い浮かんでいた。
ただ、彼女の場合は、開かないドアは開くまで執拗にノックし続ける感じだろうか。それはそれで恐ろしい。
「WAFはそういうやつが多いのかもな。自衛隊だし」
勇登はそういって笑うと、宗次も笑顔でいった。
「でも、今回は本当に助かった。今度、お礼しなきゃな」
目の前の誘導路を、真っ赤に染まったC-130が滑走していく。今日の飛行場地区はどこか美しく見えた。
しばらくすると宗次が口を開いた。
「勇登にさ、試験の日に俺が感動したって話しただろ。それまではただ強くなりたいって漠然とした想いだったけど、あの日目指すべきビジョンがはっきりと見えたんだ。入校してみて、急にあんな風になれるわけじゃない、って痛いほどわかった。苦しいし、つらいけど、あの光景が俺を支えた。だから、絶対にやめたくなかったんだ。今回の訓練が終わって、怖さや不安を乗り越える勇気のある人が、強い人間なんだって思うようになった」
「そうだな」
「……あのとき、浅井3曹のロープ、すっごくきつく縛ってあった。俺、信用してもらえたのかな」
それをきいた勇登は、男らし過ぎる亜希央にちょっと嫉妬した。
「そうかもな。でも、俺ははじめから宗次なら大丈夫だ、って思ってたぜ」
宗次は苦笑いした。
「ほんとかよ。俺のことストーキングしてただけな気がする」
「ひっで、俺はなあ……!」
「わかってる。そばにいてくれたんだよな。ありがとうな。勇登」
あまりに素直な宗次の言葉に、勇登の顔も赤くなった。
それを見て宗次は笑ったかと思うと、急に真顔になった。
「なあ、勇登」
宗次は勇登に一歩にじり寄ると、目をじっと見てきた。
「な、なんだよ」
勇登は心の中を見透かされそうな気がして、目を逸らした。
「愛してるよ」
「――なっ!」
勇登が耳まで真っ赤になると、それを見た宗次は、腹を抱えてげらげらと笑った。
*
5枚目の写真撮影は、吉海の提案でプールの前ですることになった。プールサイドでは亜希央が待っていた。どうやら、吉海が手配したらしい。
「なんだ、こいつは関係ないだろ」
そういうジョンを、剣山が穏やかに絞めた。
亜希央は「やっぱり、帰る!」といい出したが、吉海がうまいことなだめて、撮影に持ち込んだ。
海パン姿の男五人と、作業服でそっぽを向いた亜希央の写真は、宗次にとって思い出の1枚となった。
第6章へつづく
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、名称とは一切関係ありません。