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小説『メディック!』

2021/7/21

#15『メディック!』【第2章】 2-6 俺×受験者 救助

第2章 俺×受験者 救助 2-6 前回のお話を読む(#14 第2章 2-5へ)第2章をまとめて読むはじめから読む(プロローグへ) *  救難員課程の試験が終わって数カ月が経っていた。  毎日午後3時位になると、勇登はひとりそわそわしていた。今日あたり合格者への通知がくるかもしれないと思ってしまうからだ。受かっていない確率の方が高かったが、結果を見るまではわからない。試験が終わってからも、勇登はこれまで自分に課していたトレーニングを、やめることはなかった。  合格発表というのは、どうしてこんなに緊張するのだ ...

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小説『メディック!』

2021/7/21

#14『メディック!』【第2章】 2-5 俺×受験者 救助

第2章 俺×受験者 救助 2-5 前回のお話を読む(#13 第2章 2-4へ)第2章をまとめて読むはじめから読む(プロローグへ) *  全ての試験を終えた勇登は、部隊に持ち帰るお土産を買うためにBXにきていた。最後の課目は目標に届かなかったが、不思議と気分は清々しかった。 「よお、ヒーロー」 後ろからそうささやかれ、勇登は嫌々振り返った。 一番会いたくない奴、ジョンだった。 勇登は彼を無視して再びお菓子のパッケージに向き合った。しかし、ジョンはそんなことお構いなしで話を続けた。 「でも、お前は合格できない ...

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2021/7/14

#13『メディック!』【第2章】 2-4 俺×受験者 救助

第2章 俺×受験者 救助 2-4 前回のお話を読む(#12 第2章 2-3へ)第2章をまとめて読むはじめから読む(プロローグへ) *  ――3日目、体力測定、泳力測定。  雲一つない空の下、勇登が握力でジョンと張り合っていると、後ろからひときわ大きな声援が聞こえた。 「8、9、10、よし、あと2回!」 懸垂場所では、周りの受験者が懸垂する亜希央を応援していた。 懸垂の合格最低ラインは12回。女性自衛官も体力的には普通の女子が多い。しかし、彼女は細身ながらも無駄のない鍛え上げられた肉体をしていた。それに、W ...

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#12『メディック!』【第2章】 2-3 俺×受験者 救助

2021年6月30日

第2章 俺×受験者 救助 2-3

前回のお話を読む(#11 第2章 2-2へ)
第2章をまとめて読む
はじめから読む(プロローグへ)



 
 ――1日目、学科試験。

 いよいよ、救難員課程の試験がはじまった。レバニラパワーのおかげか、今日は調子がいい。

 勇登は機嫌よく試験会場の席につくと、他の受験者を見渡した。受験者は20人といったところだろうか。合格者は毎年数名程度。勇登と同じくキョロキョロしている窓際に座っていた小柄な奴と目が合った。階級は3曹、肩幅もないし、身長も160あるかないかだ。

 ――随分小さいな。

 彼は勇登の心の声がわかったのか思い切り睨んできた。まずいと思い視線をそらすと、今度は別の男と目が合った。

「あっ」
 お互い目を見開いて、みつめあってしまった。
 透き通るようなグレーの瞳に、自然な色合いの茶髪。彼は入隊以来の同期、沢井ジョンだった。ジョンは祖父がアメリカ人のクオーターだ。彼がメディックを目指していることは、教育隊時代に風の噂できいていた。

「お前、どこにでもいるな」
 ジョンは薄目で勇登を見ると、いやみったらしい口調でいった。

「お前こそ」
 勇登も平坦な口調で返した。
 教育隊時代、二人は張り合った挙句、勇登が褒賞をとり卒業時に表彰された。その後も職種が同じ消防で、術科学校では、ジョンが褒賞を取った。
 会場に試験官が入ってきたので、今度はお互いにそっぽを向いた。

 ――あいつにだけは、負けなくない。

 当時の悔しさが蘇ってきたが、すぐに頭を切り替えた。一時的な感情にとらわれて、時間を無駄にするわけにはいかない。勇登は、目の前の問題に集中した。

 ――2日目、面接試験。

 勇登は焦ってトイレに向かっていた。間もなく自分の順番だというのに、緊張しているのか、朝から尿意が止まらない。面接のようなかしこまった席は少し苦手だ。

「うわっ」
 廊下を曲がったところで急に出てきた人にぶつかった。勇登は相手に覆いかぶさるように倒れこんだ。

 ――ん?ぐにゃ?

 勇登が両手に何か柔らかいものをつかんだと思った瞬間、彼は勇登を思い切り蹴り飛ばした。

「いってぇ」
 その勢いで座り込んだ勇登の目の前には、昨日目が合った小柄な奴がいた。勇登は先ほどの手の感触を思い出した。

 ――女?

 しかし、既に仁王立ちしているその人物は、自衛隊の挙措容疑基準の男性モデルのような、バッチリもみあげがカットされた短髪だった。勇登が座り込んだまま自分を蹴り飛ばしたその人物の足元を見ると、女性自衛官用のパンプスを履いていた。やはりWAFだ。
 確か、過去に救難員になったWAFはいない筈だ――。

「おい、オレが怪我したらどうすんだ!気をつけろよ!」

 ――オ、レ?

 勇登は見た目と言葉遣いと体型の違いに混乱していた。WAFらしき人物は、胸を掴まれたことには一切触れず、昨日と同じように勇登をにらむと走り去ってしまった。勇登は呆然としたまま、ボールを掴んだときのような形のままになっている手を眺めた。
 ――小柄な割にでかいな。

「……あ、トイレ、それから面接!」
 頭を振って煩悩をどこかにやると、勇登は全力で走り出した。


 その夜、勇登は同じ部屋に泊まっていた他の受験者から、彼女がはじめてのWAF受験者、浅井亜希央(あさいあきお)であることをきいた。

つづく

※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、名称とは一切関係ありません。


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