第2章 俺×受験者 救助 2-6
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救難員課程の試験が終わって数カ月が経っていた。
毎日午後3時位になると、勇登はひとりそわそわしていた。今日あたり合格者への通知がくるかもしれないと思ってしまうからだ。受かっていない確率の方が高かったが、結果を見るまではわからない。試験が終わってからも、勇登はこれまで自分に課していたトレーニングを、やめることはなかった。
合格発表というのは、どうしてこんなに緊張するのだろうか。自信満々で×の場合もあるし、駄目だと思っていたのに〇ということもある。期待とは逆の方向にいきそうで、最後は考えるのをやめたくなる。
「志島!」
総括班に命令受領にいっていた先輩が勇登を呼んだ。
そして、おもむろに一枚の紙を渡した。
先輩は、それを見ろ、と目で合図した。
試験の合否者名簿に間違いなかった。
――頼む!
勇登は恐る恐るその紙を覗き込んだ。
「――おっしゃぁ!」
自分の名前を見つけた瞬間、思わず声が出た。
駄目だと思っていたのに合格したパターンだ。
名簿には全部で五名の名前があった。勇登は宗次とジョンの名前を見つけた。無意識に亜希央の名前を探したが、あとの二人は知らない人物だった。
そのとき、職場の電話が鳴った。音で他部隊からの内線だとわかった。
勇登は、すかざす取った。
「はい。消防小隊、志島士長です」
「合格おめでとう」
名乗りもせずそういったのは、由良だった。
「情報早いね」
「あんた、私を誰だと思ってるの」
勇登の母は2等空佐志島由良、総務幹部だ。
「失礼しました。志島2佐」
「ふざけてんじゃないわよ。……あんたが受かったってことは、落ちた人もいるんだから、気合いれて行きなさいよ」
核心をついた由良の言葉に、勇登は背筋を伸ばした。
※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、名称とは一切関係ありません。